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おかみさん

和食処 おかみさん

郡上市明宝エリアにあるという郷土食「つぎ汁」を求め、道の駅「明宝 磨墨の里公園」内にある「おかみさん」を訪ねました。

全国のスーパーでもよく見かける「明宝トマトケチャップ」を製造している、明宝レディースが手がけるお店。メニューは、お母さんたち手作りの日替わり定食、ご当地明宝ハムカツステーキ定食、飛騨牛定食、豆腐ステーキ、オムハヤシなどなど、みんな大好きなメニューが充実しています。

お母さんの作る優しい味

お母さんの作る優しい味

今回は「鶏ちゃん(ケイチャン)定食」と「明宝ハムカツカレー」を注文。カレーは好きな辛さを選べます。こちらの鶏ちゃんは、たっぷりの鶏肉と、玉ねぎ、キャベツ、人参、ピーマン、と野菜も沢山!!小鉢にはお母さん手作りの惣菜もついています。カレーは、厚切りの明宝ハムに、地元の特産・トマトがたっぷり入った深みある味。

明宝・郷土料理編3
明宝・郷土料理編4

平日の店内は、昼時になると常連さんたちであっという間に溢れかえりました。お母さんが家族を想いながら作るように優しく、でも本格的なお料理だから、常連さんも多いんですね。これらの定食の汁として付いてくるのが、今回の主人公「つぎ汁」です。

明宝・寒水地区の郷土料理
「つぎ汁」をいただく

「つぎ汁」の見た目は、すまし汁に細かい角切り豆腐が少しと、なんともシンプル。いただいてみると、ん?! だしが効いてて美味しい!!そして……じんわりと辛い、初めて感じる美味しさです。これはおかわりしたくなる!と思ったら、嬉しいことに、おかわりが出来るそう。ますます、つぎ汁の美味しさの秘密と歴史が知りたくなり、教えていただきました。

明宝・郷土料理編5
明宝・郷土料理編6

作り方は、昆布、干し椎茸、煮干しと、炒った明宝南蛮(唐辛子)を丁寧に煮出し、手作りの硬い豆腐を小さく刻んで加え、醤油、砂糖で味を整えます。豆腐が細かいのは、水分が出て汁が薄まらないように。だから贅沢な出汁の美味しさなんですね!

明宝・郷土料理編7
明宝・郷土料理編8
明宝・郷土料理編9

由来は定かでないですが、「つぎ汁」は、明宝レディースの工場がある明宝寒水(かのみず)地区の郷土料理。この地区に本光寺さまと呼ばれているお寺があり、年に1度、お寺にお参りする仏事「報恩講」の日にお参りする人はお米をおさめ、お寺からはご飯と料理を振る舞います。振る舞い料理は、檀家さん持ち寄りの精進料理(かぼちゃ煮、ひじき煮、豆腐など)と、地元では「たかたかまんま」とよばれている椀に高々と盛られた約2合分ものご飯!そして「つぎ汁」が御膳で出されます。

つぎ汁は「きったて」と呼ばれる専用鍋から、1本の箸で混ぜながらお椀に注ぎます。お椀を持った人たちについでまわることから「つぎ汁」の名がついたそう。つぎ汁は日常食というより、結婚式や葬儀が行われた時など特別な時に作るものでした。

明宝・郷土料理編10
明宝・郷土料理編11

最近は、家で集まりの機会が少なくなり、つぎ汁を食べる機会も少なくなりました。そんな中おかみさんで提供するつぎ汁は地元の方にとっては懐かしい味、観光で訪れる人にとっては初めての美味しさ。定食の中の一杯の汁で、美味しく郷土食を感じれるのが素晴らしい!笑顔のお母さんたちが作る料理、そしてつぎ汁を、いただきに行きたくなる店でした。

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minokamo(長尾明子)プロフィール画像

minokamo(長尾明子)

岐阜県美濃加茂市出身。郷土食研究家、写真家、挿絵家。子供の頃、祖母の家で、「祖母と一緒に作った料理」の記憶から、料理で楽しく人と繋がることをテーマに、その地に根ざした食材で料理提案、イベントも開催、プロデュースする。各媒体でのレシピ提案、道の駅メニュー開発、全国の郷土食取材では、撮影、文章、撮影、アレンジレシピ作成も手がける。写真家としても活動、料理、スタイリングはもちろん、コミュニケーションを通して楽しい輪作りを行う。岐阜新聞で季節の料理連載中。

Photographs by minokamo