拝殿踊り

拝殿踊り

切子灯籠の下で歌って踊る!
幽玄で素朴な白鳥の拝殿踊り

少しずつ日が暮れる夕方、大きな切子灯籠が神社の拝殿に吊るされ、その灯りの下で唄と手拍子、下駄を鳴らして踊る素朴な踊り「白鳥の拝殿踊り」。江戸時代の中頃からお盆に踊られていた、いわば盆踊りの元祖とも言える踊りです。昔ながらの踊りを今なお継承していることから、平成13年(2001年)岐阜県重要無形民俗文化財に指定され、続いて平成15年(2003年)に国選択無形民俗文化財に選ばれました。子どもから大人まで、地元の人も県外から訪れる人も、みんながそれぞれに楽しめる白鳥の拝殿踊りの魅力をご紹介します。

  • 長滝白山神社 長滝白山神社
  • 前谷白山神社 前谷白山神社
  • 白鳥神社 白鳥神社
  • 野添貴船神社 野添貴船神社
長滝白山神社 長滝白山神社
前谷白山神社 前谷白山神社
白鳥神社 白鳥神社
野添貴船神社 野添貴船神社

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長滝白山神社
前谷白山神社
白鳥神社
野添貴船神社

格調高い白山信仰の流れを汲む
唄と手拍子、踊り子の下駄が鳴り響く盆踊り

郡上市白鳥町は美濃馬場や白山中宮長瀧寺(はくさんちゅうぐうちょうりゅうじ)を中心に、白山信仰と共に栄えた町です。「白山(はくさん)」は、その昔、富士山・立山と並ぶ三名山のひとつであり、修験道の盛んな信仰の山、焼畑農耕文化を残す山としても知られています。白鳥町は白山信仰の東海側の拠点「美濃馬場」としてにぎわいました。「山に千人、麓に千人」と言われるほどで、長滝白山(ながたきはくさん)神社や石徹白(いとしろ)の白山中居(はくさんちゅうきょ)神社には多くの修行者・登拝者が行き交っていたと言われています。そして、その修験者たちが白山で受けた神託を踊りで伝えたのが始まりであり、盆踊りの原型とも伝えられているのです。かつて白鳥の人たちは、お盆になると神社の拝殿に集まりました。悪霊除けの花笠に由来する大きな切子灯籠が吊るされた拝殿に下駄履きで上がり、若者が音頭を取り合い、手拍子と下駄を鳴らす音だけで踊っていたそうです。板床を踏み鳴らす下駄の音が悪霊を追い出し、地の神を呼び起こすと考えられていたからです。三味線も笛も太鼓もない。江戸時代の中頃から先祖代々伝わってきた素朴な踊りを、そのまま継承しているのが白鳥の拝殿踊りなのです。

盆踊りの元祖!場所踊りを継承

原型となったのは「場所踊り」と言われる踊りです。「バショウ」踊りとも表記されますが、名前の由来ははっきりしていません。「場所踊り」は、神社境内の板敷きの拝殿で、下駄を履いて踊られることが特徴で、白山信仰の修験者が伝えた唱歌や歌念仏、山念仏と念仏踊りが融合して生まれたと考えられています。優雅で格式の高い踊りで、礼儀正しく挨拶をかわし、地元と他村の名乗り合いが唄われています。ゆったりとしたテンポで単純な動作の踊りのため、夜明けまで疲れることなく踊り明かすことができるのも特徴のひとつ。村と村との間で踊りと唄の挑戦をし合う形で催され、当時は厳しい段取りや作法も決められていたようです。

<演目>

白鳥おどりと同じ演目をお囃子なしの唄と手拍子のみで踊られます。
主な10種目の踊りの中で最も古い「場所踊り」から始まり、 軽快で早いテンポの「エッサッサ(世栄)」、お座敷歌であったと思われる「源助さん」、白鳥地区のお寺名を歌い込んだ数え歌風の速いテンポの「シッチョイ」、江戸時代の宝暦一揆を歌いこんだ「ヨイサッサ(老坂)」をはじめ、「ドッコイサ(神代)」「猫の子」「ヤッサカ(八ッ坂)」「さのさ」「よいとそりゃ」が主な種目です。白山民謡文化圏の古い種目を、これだけまとまった形で伝承されているところは、他にはありません。実際に、文化庁などの調査でも「白鳥の拝殿踊りは、信仰に深く根差した踊り、労働に関わる踊り、お座敷踊りなどがあり、伝承されてきた時代に差はあるものの、発祥地では途絶えてしまった踊りが、この地に比較的良好に、10種類程度まとまって、お盆時期に『拝殿踊り』として伝承されている」と、歴史的価値が高く評価されています。

江戸時代の中頃から
途絶えることなく受け継がれてきた
白鳥の拝殿踊りは4つの神社で開催

切子灯籠の下で歌って踊る!幽玄で素朴な白鳥の拝殿踊り

拝殿で行う盆踊りがいつ始まったのか定かではありませんが、享保8年(1723年)7月9日の「経聞坊留記(きょうもんぼうるき)」(長滝白山神社所蔵)に「盆中御宮にて踊り申事奉行により停止の書状到来」と記述があり、逆にそれまで境内での盆踊りが行われていたことがわかります。そして、これが白鳥の拝殿踊りを示す最古の資料ということで、白鳥の拝殿踊りの発祥祭が毎年7月9日に長滝白山神社で行われるようになったのです。禁令が出されながらも密かに踊り継がれてきたのは、盆踊りを深く愛する白鳥の若者たちが多くいたという証です。

かつては様々な神社で行われてきた拝殿踊りでしたが、「白鳥の拝殿踊り」を行う神社は長滝白山神社、前谷(まえだに)白山神社、白鳥神社、野添貴船(のぞえきふね)神社のみとなっていました。しかし近年、「拝殿踊りを継承したい」という地域の人たちの想いと他県から訪れるファンの願いが実を結び、拝殿踊りを行う神社が少しずつ復活しています。

切子灯籠の下で歌って踊る!幽玄で素朴な白鳥の拝殿踊り
  • 素朴で和やかな昔ながらの盆踊りを楽しめるのが魅力

素朴で和やかな
昔ながらの盆踊りを
楽しめるのが魅力

白鳥拝殿踊り保存会 会長代行の蜂谷龍夫さん

  • 素朴で和やかな昔ながらの盆踊りを楽しめるのが魅力

第二次世界大戦後の昭和22年(1947年)に「白鳥踊り保存会」が発足され、さらに拝殿踊りの古い姿を保存伝承するために「白鳥拝殿踊り保存会」が設立されました。拝殿踊り好きが高じて保存会へ入ったという、会長代行の蜂谷龍夫さんと副会長の曽我金一さんにお話を伺いました。

「白鳥おどりとは違い、白鳥の拝殿踊りは唄と手拍子、下駄を鳴らす音だけで踊ります。淡い赤味を帯びた切子灯籠と神殿に灯る光の中で、みんなが輪になって踊る姿は活気があって楽しいですよ。白鳥おどりや他の盆踊りとは違い、お囃子が上るおどり屋台はなく、保存会の会員も一緒に輪に入って唄って踊ります。曲の始まりの音頭を取る人は決まっていません。声や唄のよさによって踊り子たちの反応が変わるので、いかに音頭を取るか、美声を競い合っています。一節ずつ唄う人が変わる曲があるのですが、誰が唄うのか決まっていないのでタイミングが難しく…。調子が狂うと踊り子さんから冷やかしを受けることもあります(笑)。それに対してアドリブで返すこともあり、その日その時間だからこそ!のライブ感を楽しめるのも魅力のひとつです。

白鳥の拝殿踊りは、娯楽の場・男女や友人の交流の場であり、若者たちの楽しみの場所であったということも、踊りと一緒に継承しています。遠くから来てくれてありがとう。仲間にしてくれてありがとう。そんなことを唄に盛り込むことができる自由度の高さ、県外の人でも大人も子どもも男も女も、誰でも音頭を取ることができるという気さくさに惚れ込んで、白鳥に移り住んだ人もいるんですよ」と蜂谷さん。拝殿という言葉のイメージから神聖で厳かなイメージを持つかもしれませんが、実際はとても素朴で和やかな昔ながらの盆踊りを楽しめるのが魅力です。「少し前までは長滝白山神社や白鳥神社など4つの神社のみで踊られてきましたが、縁日にちなんで拝殿踊りを行う神社が少しずつ増えてきています。正しい唄、踊りは保存会の会員がしっかりと継承していきますので、参加してくれるみなさんには心から楽しんでもらえるとうれしいです」。

白鳥の拝殿踊りスケジュール

  • ・7月9日 長滝白山神社
  • ・8月16日 前谷白山神社
  • ・8月17日 白鳥神社
  • ・8月20日 野添貴船神社
  • ・9月26日 白鳥神社

拝殿踊りが行われる神社は、少しずつ増えてきています。
白鳥観光協会公式サイトにてご確認ください。

拝殿踊りスケジュール

白鳥の拝殿踊りが行われる4つの神社