郡上の外遊人(ソトアソビト)インタビュー 夏到来!! 長良川の魅力を『ラフティングガイド』に尋ねて分かったコト
日本三大清流のひとつ「長良川」
大日ヶ岳を源に郡上を縦断するように流れ、やがては伊勢湾へ注ぐ一級河川です。
伝統文化や産業を育み、歴史を築き、昔から流域の人たちの暮らしを支えてきました。
この長良川の懐で生まれ育ち、長良川とともに生きている人たちがいます。
今回お話を聞いた高橋英翁さん(リバーネーム:ヒデ隊長)もそのひとり。ラフティングなどのリバーアクティビティ事業者「アースシップ」に所属するリバーガイドです。
「長良川のリバーガイドってどんな仕事?」
「ヒデ隊長がリバーガイドになったきっかけは?」
リバーガイドは川遊びのプロフェッショナル。プロから見た長良川の魅力や、安全な川遊びについていろいろ教えていただきました。
高橋英翁さんプロフィール
・岐阜県郡上市美並町生まれ
・市外での就職の後、Uターン後、EARTH SHIPにてガイドを始める。
・EARTH SHIP GREEN 統括責任者
・長良川ラフティング組合の事務局員。
・リバーネーム【ヒデ隊長】
※川の上のニックネーム
コミュニケーションを円滑にすることや、緊急時に迅速な行動を取るといった目的でゲスト、ガイドともにリバーネームを川では使う。
郡上でラフティングガイドになった理由。
私は郡上市美並町出身で、中学生の頃からアースシップ代表の水口と面識があり、「ラフティング」というリバーアクティビティーのことも知っていました。
ある日、大人になった私が帰省した際に水口とたまたま再開し、そこからアースシップとの関わりが始まりました。
最初は車両準備や写真撮影などツアーの陸上サポートスタッフとして携わっていました。
ツアーに同行する中で、とにかく「ラフティングガイド」がカッコいい!!
ラフティングガイドを目指したのは、そんなすごく単純でストレートな動機からです。
それからトレーニングを積み、次のシーズンにはガイドとして働いていました。
ラフティングガイドになるために必要なこと。
▼ラフティングガイドに興味・関心のある方へ
ラフティングツアーに参加し、私と同じ理由から「ガイドを目指したい!」という方もいます。
ガイドは、日々変化する川の状態を見極めながらお客様に楽しんでもらえるように、サービス向上への探求心が必要です。
まずは自分自身がラフティングへの興味を持つこと、「かっこいい!」「楽しい!」、そして「川が好き!」という気持ちが大切だと思います。
▼ラフティングガイドの資格や試験について
ラフティングは、急流をボートひとつで下るアクティビティなので、安全性と質の高いツアーが求められます。
『一般社団法人 ラフティング協会(RAJ)』は、国内唯一の公的ライセンス発行機関であり、アースシップも加盟しています。であり、ラフティングガイドになるには、ロープワーク、レスキュー、スイムなどのトレーニングを積んで、ガイドとして必要なスキルを身につけ、RAJの筆記と実技の試験に合格しなければいけません。
RAJの他にも、事業者ごとに独自の試験やトレーニングを設けています。
ガイドに興味があるけどレスキューなど経験がないという人も丁寧なレクチャーで一から経験を積むことができるので、ぜひガイドを目指してみてください。
全国の河川で遊んできた「ヒデ隊長」から見た、長良川とは?
子どもの頃から当たり前のように家の近くの長良川で遊んでいたので、地元を離れ他の地域に暮らした時、「遊べる川がなかった」ことが衝撃でした。
長良川は人との関係も深い川だと感じます。
地域の人々との距離感近く、また、遠方から川下りや鮎釣りに訪れる人も多い。これだけ多くの人々が川にいるという光景自体が他と比べても珍しいことだと思います。
ガイドになってから、全国の河川で遊ぶ機会が増え、そこでわかったのですが、他の河川では『今日は〇〇トン放水あり』など、ダムによって流量がコントロールされている。
私たちガイドは、ツアーの前には必ず川の水量やコンディションを確認するのですが、そういう川では自然な流れを体感できないのです。
何か歯がゆさみたいなものを感じます。
長良川本流は『ダム』がないので、その時その時で表情が変わり、自然な川の流れを楽しめます。これも長良川の特徴だと感じます。
そのような豊かな環境だからこそ、人は長良川に寄り添い、ともに生きてきたんだと感じます。
しかし、子どもの頃から長良川で遊んでいるからこそ、長良川の変化も肌で感じてきました。
子どもの頃との比較になりますが、最近は安定した流量がないということを感じます。
近年、大雨の影響による洪水や土砂崩れなどの災害が多発していることが気になります。
災害によって護岸工事が増え、川が自然の形でなくなっていくことは川であそぶひとりの人間として悲しく思います。
自然あそびのポテンシャル!ラフティングを通じて伝えたいこと
最近では、修学旅行や自然教育の授業の一環として、市内外の中高生がラフティングを体験しています。
ボートの上から見える川底や魚などの生き物、水に入った時に感じる冷たさや気持ち良さなど、響く部分は子どもたちによっていろいろですが、体験を通じて、それぞれが学びや楽しさを見つけています。
県外や都市部の子どもたちは、自分が暮らす地域との違いがはっきりとわかるので、自然を大切にするという気持ちをより強めてくれていると感じています。
郡上でも、昔より、子ども達が川で遊ぶ機会が少なくなってきています。
地元の子もラフティングを体験することで、川の魅力を再認識したり、川への興味が深まればいいなと願っています。
地域と連携し、地域に愛されるリバーアクティビティのあり方とは?
私たちリバーアクティビティー事業者は、ボートの運搬、ツアーサポートなど陸上からの車両並走などで、普段から地域道路を頻繁に使用しています。
車両ルートを統一し、地域の方の迷惑とならないように、長良川ラフティング組合の全事業者で同じ認識を持って活動しています。
河川の草刈り作業や、ゴミ拾いなどの清掃活動も積極的に行なっています。
また、郡上市消防本部と合同でボートの操船訓練なども行っており、地域内で起きた河川事故等の際には救助活動に協力しています。
楽しく安全にあそぶ!ガイドから学ぶ川のリスクと安全な遊び方について
絶対に一人で川に行かないこと!
そして、川のコンディションをしっかりと判断することがとても大切です。
例えば、濁っている時は増水していて、澄んでいる時は水量が少ない、というのは大間違いです。
雨などで水量が急激に増えた後、水位が減少する過程の川はとてもキレイですが、水量が通常時より多かったり、水温が低いなど、とても危険な場合があります。
国土交通省の【川の防災情報】では、水位計の測定結果を知ることができ、通常の平均的な水位との比較が出来るので、川での事故を予防するための判断のツールとしてぜひ活用してみてください。
また、ライフジャケットを装着することも自分の身を守ることに繋がります。
郡上では、川遊びは地域全体の慣習でした。
昔は、地域の大人が交代で見守りをしたり、川に入っても良い日、ダメな日を旗で知らせる地域もありました。
今ではその文化も失われつつありますが、できるだけお父さんお母さんは子どもを川へ連れて行ってあげて欲しいと思います。
川遊びで初めて経験できることや、学ぶことがあると思います。
日々変化する自然環境の中、遊びから得られる学びは、決して学校の勉強では学べないことばかりです。
川で遊ぶ機会をたくさん作り、大人が直接教えてあげられることや、子ども達が自ら学ぶ機会を作ってあげることがとても大切だと思います。
せっかくキレイで遊べる楽しい川があるので、まずはたくさん遊びに行ってください。
もちろん、私たちのような川のプロがサポートできることもあるかとは思いますので、ご相談などあれば遠慮なくご連絡ください。
最後に、この記事を読んでいただいた皆さまへ
いつでも長良川へ遊びに来て、たくさん遊んで思いっきり楽しんでください!
そして長良川を大切に思ってもらえたら嬉しいです。