GUJO OUDOOR WEEK 2021 トークセッション イメージ

100年先も郡上に遊べる川と雪山を残すために。 GUJO OUDOOR WEEK 2021 トークセッション

2021年10月末から11月頭にかけて開催されたGUJO OUTDOOR WEEK。郡上市内全8会場で同時多発的にアウトドアプログラムが開催される一大アウトドアイベントとなりました。その企画の一つとして、郡上市八幡町に特設されたメイン会場にて、今回の実行委員のメンバー且つ、郡上市アウトドア事業者協議会のメンバーでもある4名によるトークセッションが行われました。GUJO OUTDOOR WEEKはどのように立ち上がったのか?郡上のアウトドアの魅力は?そして、最近リアルに肌で感じる環境の変化など、1時間超お話しされていた内容をダイジェストでお届けします。

トークセッションメンバー
●GUJO OUTDOOR WEEK実行委員会
  水口晶(有限会社EAT &LIVE 代表取締役社長))
  麦島洋介(new tech株式会社 代表取締役)
  堀江政志(中部スノーアライアンス株式会社 取締役 ダイナランド支配人)      
  堀義人(GOODJOB LAB代表)
●ファシリテーター
  岡野春樹(一般社団法人 長良川カンパニー)

まず、なぜこういうメンバーでアウトドア事業者協議会を立ち上げられたのか、きっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか?

水口:事の起こりは2018年のスイス・ツェルマットの視察ですね。
郡上市が「観光立市」を掲げた年に市長や議員さんたちがスイスに視察にいき、その次の年に我々事業者も連れて行ってもらうことができました。

マッターホルン

水口:現場を見て回ったり、市役所の職員の方々とこれから郡上の観光について話をしたりする機会があって、課題に挙がったのが情報発信でした。郡上っていろんなコンテンツや体験があるんですけど、それぞれの事業者がそれぞれに発信して集客して完結していたんですね。

スイス然り海外では、一つのウェブサイトや窓口で観光とかアウトドアの全ての情報が集約されていて、予約も決済もできる。そういうことが郡上の中でできたらなと。例えば、昼にラフティングやって、夜泊まる場所を探せて、次の日ランチやアクティビティも決めれてっていうのを一ヶ所でできるようにまとめないといけないなと思っていて。それを提言したのがスタートですね。

麦島:自分達の年代で話ができるようになってきたタイミングでもありましたね。立ち上げ当時は水口さんが青年部長で僕が副部長で、堀さんは前元商工会青年部長やし、なんか面白いことやろって。

水口:そうやったね。今回、郡上観光連盟とかの協力も仰ぎながら組織作るから一気にガッとやろうよっていったらすぐに賛同してくれました。

GUJO OUTDOOR WEEK実行委員長
水口晶(有限会社EAT &LIVE 代表取締役社長)

協議会のメンバーに「スキー場さんも入るんだ」ってことに結構びっくりして。なんでこの協議会に入ることにしたんですか?

堀江:正直、僕が会社に入った15年前でもすでにスキー業界が低迷というか落ち目に入っていたので、実はそんなに儲かっているところはないんですね。スキー場というけど、僕は本格スキーリゾートやスノーリゾートじゃないといけないと思うんです。

岡野:スキー場とスノーリゾートは違うと?

GUJO OUTDOOR WEEK実行委員会
堀江政志(中部スノーアライアンス株式会社 取締役 ダイナランド支配人)

堀江:スキー場は滑るだけのものだけど、スノーリゾートというのは、そこに滞在してスキー以外のことも楽しめて、さらに冬だけじゃなく夏も楽しめるところ。これは僕がずっと思っていたことなんですけど、そんな時にこのメンバーと巡り合うことができて、「まさにスキー場が今後やらないといけないことのヒントがここに隠されている」と、いうふうにすごく感じたんですね。

岡野:入社当時から危機感があったと。

堀江:ありましたね。スキー場はこの4年ほど暖冬を経験して、全国のほとんどのスキー場が「スキーだけじゃやばい」と、思ったんじゃないかな。さらにコロナの影響で外国人の方もいらっしゃらなくなりましたし。

他の地域と比べたときに郡上のアウトドアの特徴ってどこにあると感じられてますか?

麦島:四季それぞれにメリハリがあること。あとは、歴史をはじめとする背景が深くて、それぞれのコンテンツを掘り下げていくと無限に楽しめるということだと思っています冬は大きく「雪」というコンテンツがあって、ゲレンデではリフト回すことが生業ではあるのですが、実は雪山を使ったコンテンツが実は他にもたくさんあるんですね。

今回の郡上アウトドアウィークのイベントの企画がまさにそうなんですけど、なかなか表に出づらい事業者さんやコンテンツを種を探すように少しずつ見出して、ブランディングなどを手伝えるような機会にできたらと。それくらい郡上には他の地域と比べて使えるものが多いなと。

岡野:確かに、スキー場などのアウトドアプログラムもあれば、城下町での文化的な体験プログラムもあるんですよね。ですが、前に、地元の人が「セットで楽しめるものがないんだよね」っておっしゃっていたのを聞いたことがあります。川遊びをしたあとに歌や踊りも楽しんでいけるみたいな、郡上の人たちの遊び方までは仕組み化できていないと言われた時に、郡上の魅力は立体的に捉えるのが大事なんだなって感じました。

麦島:複合的なリゾートというかね。先っぽだけぐいぐい引っ張っていくんじゃなくて、幅広く連携して面として攻めるべきものがあるいうのは郡上の強みかなあと。

水口:例えばうちでラフティングして、高鷲で貸別荘に泊まるという過ごし方は、お客さん側は以前からきっとやられてる。お客さんがそうやって幅広く郡上の中を動いてるのに、事業者が全然繋がってなかった。それって逆でしょって。だから、そこは絶対やった方がいいと思って機会をうかがっていました。そういう意味で今はいろんなタイミングが合ったし、コロナの影響でこういうことができているというのもあるし、コロナがもたらした副産物も、結果的に今ではすごく有り難いとも思っている。

小さい頃からずっと郡上の川で遊んできた麦島さんにとって、今どういう環境の変化を感じていますか?

GUJO OUTDOOR WEEK実行委員会
麦島洋介(new tech株式会社 代表取締役) 

麦島:なんかね、子どもたちを見ていて自然との距離感があるなと。自然に対する価値観が薄れているというか。「あゆパーク」で子どもたちと接していると、川に対する知識を含め自然のことを学ぶ機会が薄れてきているなと思いますし、それは危惧していることの一つですね。関心を戻したいというか、せっかく川があるのにその価値を伝えられていないのは勿体無いのかなと。

岡野:如実に変化を感じていらっしゃると。

あゆ1,000匹つかみとり大会の様子

堀:先週のアウトドアウィーク前半、岐阜から僕の友達が小学校2年生くらいの子どもをあゆパークに連れてきてて、「魚がさわれないんだ」って言うから「頑張って一匹撮ろうよ」っていう話しをしてたんですね。気になって見てたら3匹獲ってた。今まで魚に触れなかった子が、イベントがきっかけで触れるようになった!

GUJO OUTDOOR WEEK実行委員会
堀義人(GOOD JOB LAB 代表)

僕はこういう経験が、この100年先につながっていくと思っていて。だから、そのために「遊びましょう。」ということで遊ぶコンテンツを散りばめた世界観になったのかなと思っています。
だから本当に、何か大きな変革はできないんですけど、何かのきっかけになればいいなと。今回のポスターもそういう思いでつくりました。

ポスターを段ボールで作ってらっしゃってすごい面白いなと思ったんですけど、デザインという観点からはどういう想いで関わってらっしゃるんですか?

堀:「ゴミになるものを作るんじゃなくて、ゴミをもう一回使おうよ」っていうところから、みんなで郡上中の業者さんから集めてきて、郡上の地場産業であるシルクスクリーンという技術を使って印刷したんです。
とはいえ、これが今流行りのSDGsだ!と見せびらかすとかいうことではなくて、「なんでこれ段ボールなんだろう」って、ちょっと疑問に思ってもらうとか、「あ、面白いね!」って思ってもらえることが始まりなような気がしています。だから言葉じゃなくて、面白いとか、かっこいいとか、楽しいとか、そういったところからきっかけができるといいな。
これも、GUJO OUTDOOR WEEKのコンセプトの一つに繋がってるかなと思っています。

岡野:今は気候変動のことも含めて、いきなり結論を押し付けられることが多いなと思っていたので、この話は企画としての遊びがあるというか。こういうことができるのが実は郡上の底力であり、僕が客観的にみて一番かっこいいなって思ったところです。

印象的だったのは「遊びましょう」や「100年後も郡上に遊べる川と雪山を残すために。」というコンセプト。この言葉に至るまで、どういう会話をされていたのかなと。

水口:そこはね、環境的な危機感にあたる。特にここ数年、スキー場の降雪不足は明からさまだし、川も夏前なのにあり得ないくらいの水の出方をしたりしてるし、やっぱり異常な状態を肌で思いっきり感じる。このままいくと自分の子どもたちの世代で川で遊ぶことができなくなるんじゃないか、山に雪が降らなくなるんじゃないかっていうことをリアルに思う。そこはなんらかのアプローチをするべきだし、やるなら当然連携が必要だよねって。

堀:正式なコンセプトは「100年先も郡上に遊べる川と雪山を残せすために、遊びましょう。」なんですよね。デザイン上は「遊びましょう。」が最初にきてるけど、本来は関心を広めたいという想いが大きいかなと思っています。「気候」という言葉は大きすぎるのですが、10年、20年のスパンではないよというところであえて「100年」という大きな目標を掲げたんです。

「遊びましょう。」って、もっと自然の中で遊ぼうよということでもあり、みなさんのように事業でチャレンジするという意味でもあるのでしょうか?

水口:そうですね。「遊び」の定義も徐々に自分の中で変わってきていると感じます。いつの間にか遊びというのは仕事と対極にあるような捉えられ方をするけど、「楽しむ」っていうのに近い、もっと身近なものだったりする。だから、実は僕はこのイベント自体も遊んでると思ってて。僕が「遊びましょう」っていってるのも、具体的にフィールドに出ましょうというのもそうだけど、最近は「日常から遊んでいきましょうよ」っていう意識で言ってる方が強い。

岡野:そうやって積極的に日常から遊んでいった矢先に自然の変化に気づいたりしていくだろうなと思っています。今皆さんがまさにやっておられるGUJO OUTDOOR WEEKのイベントのことや、GOE(GUJO Outdoor experiences)の背景を伺って、結局は郡上を楽しんでる一部のコアなお客さんたちが知ってることを、ちゃんと事業者同士もつながることで他の人も再現できるようにしていこうよとか、こっちの地元のお兄さんたちがやってるような楽しい遊びを、外の人にも開いていこうとしているのが温かいなと思いました。

民間の人たちだけでなく行政とも一緒に協力して壮大な遊びが築かれようとしてますね。

水口:イベントをやってみて実感したんですけど、スケール感が全然違うんですよね。今回は観光連盟さん然り、郡上市のバックアップを受けながら国の補助金を受けてこのイベントを実現してるんですね。我々民間は民間の得意なところでアイディア出しだしをしたり、企画を組んだりというところをしてるんですけど、これだけのことができるのは裏で支えてくれている市の職員の人や観光連盟の人の頑張りのおかげなんです。これは民間だけでは絶対にできない。

岡野:ある意味、今までしっかり組んでこなかった人たちとやってみることで広がりが見えてきたと。

水口:そうそう。こういう場所を使うということも民間だけではなかなか成し得なしえなかったことなので、ほんとありがたいですね。これを機会に、もう一度行政とタッグを組めるならどんな面白いことを仕掛けていけるんだろうって描くきっかけになりましたね。

麦島:わくわく感が大きいですよね。あと、僕達のやってることのスタートはアウトドアっていう雰囲気がありますけど、これからはそうじゃないいろんなジャンルや世代の事業者さんや地元の人も巻き込んでいけると面白い将来が見えるかなと思って。

岡野:確かに「郡上アウトドア事業者協議会」と聞くと「それ俺じゃないわ」っていう人たちもいそうですけど、要は外遊びだとか、拝殿でやられてる踊りや歌といった文化的なことも全て包括しようとされてるという話なんですよね。

水口:そう。今、GUJO Outdoor experiencesから、GUJO NOASOBUというところにも展開し始めていて、それは我々事業者だけじゃなく、郡上のおじさんやおばさんたちが講師になって、例えば春に山菜を採って食べたり、秋にキノコを採りに行ったりっていうことがプログラムとして成り立つような仕組みなんです。郡上の人たちが普段遊んでるようなことが都会の人からしたらめちゃくちゃ面白いエクスペリエンスになってる。そんなことを、一緒になって楽しんでいきたいなと思っていて。

岡野:ただのツーリズムとしての遊びのことだけを扱おうとしているのではなくて、郡上という源流域に元々あった暮らしと地続きの”土地付き合いそのもの”をこれから発信していこうとされているのだなという印象を受けました

スキー場として、協議会に関わり始めて見えてきたポジティブな兆しや、起きてきた動きが感じられることはありますか?

堀江:僕自身がそういう経験をしてるかな。スキー場は別枠でいたというか、ずっと「スキー場関係者」という縦割の中にいたところに、今回協議会ができたことで「アウトドア事業者」という横串がズバッと入ったわけなので、今この場に座らせてもらってることも新しいことだし、こういった話をスキー場の関係者にするようになったことも一つですね。
先週は高鷲スノーパークというスキー場で水口さんとキャンプイベントを企画したんですけど、あの光景にはみんな目から鱗なわけですよ。

岡野:サウナとか並んでね(笑)

堀江:そう、サウナとかね。キャンピングカーとかもガチなものが並んでたり。そういったこれまで見えなかった光景がまさに目の前にできてきているというのが社員のみんなにとってすごい刺激になっていて、それを機にどんどんアイディアが浮かんできている。これはほんとに明るい兆しだなと思いますね。

最後に…。GOEやGOWなどの取り組みを始めてみた中で、今みなさんそれぞれが想像してらっしゃる「起きてほしい未来」を教えていただけますか?

麦島:自分には3人姉妹の娘たちがいるんですけど、お父さんがやっとることを継ぐとは言わんにしても、「カッコイイ!」って見てくれてるとか、なんだかんだそういうところが欲しい未来かなと。そういう一言があったら、俺良かったなっていう。そのためには自分達がいかに楽しむかが大事やと思うんです。アウトドアだから楽しいとかではなくて、普段のいろんな仕事だったり生活の中で楽しんでるということが、長続きするコツじゃないかというのがあって。こうやって寝ずに3ヶ月やって、それでも楽しいってやってる自分達がいて、そういうことに共感できる人の輪が広がれば、それがやって良かったねという話になるのかなと。

堀:一つは、100年先も「郡上おどり」「白鳥おどり」「拝殿おどり」というこの郡上の盆踊りというものが残っていくこと。これは個人的な思いでもあるんですけど、それが一番かなあと思います。あとは、これから郡上はどういう方向性の街になっていくかを問われ、選択をしていかないといけないタイミングがくるだろうなと思っていて、それを選択するのは大先輩なのか、もしかしたら僕達の世代なのかもしれないし、次の世代なのかもしれないですけれども…それが僕たちの世代であったとしたら「郡上って50年、60年前くらいに変なやつがいたもんでこんな変な街になったけど、めっちゃいいよね」って言われたい!

堀江:100年後、なんとかやっぱりスキー場を残したいですね。それが一番かなと思います。暖冬で雪がない中一生懸命スタッフがソリゲレンデを作って、土が見える中で子どもたちがそこを滑ってるのを見た時に、「本当の雪って茶色くないんだよ」って思ったんですよね。雪を残すためにはさっきから話してる環境の話についてはほんと真剣に考えないといけないなと思う。今の僕の娘とかその子どもたちが「日本に雪が降ってたんだって、昔。」みたいなふうになることは絶対に避けなきゃいけないと思う。実は、韓国とか中国にもスキー場ありますけど人工雪で作ってるんですね。天然雪が降る日本は恵まれてるので、なんとか残して子どもたちに雪の楽しさを伝えていきたい。

水口:約30年前に初めて郡上に来て「自然園」の下に潜った時、あまごがめちゃくちゃうじゃうじゃしてて、水面の中から見た光景がキラキラキラとしてて、「なんてところだ!」と思ったんです。その光景が忘れられなくて。それをずっと伝えたいなって思ってます。来年、うちは25周年になるんですけど、初期のお客さんが今は子どもを連れてきてる。お客さんが第二世代になってるのね。これが第三、第四世代に繋がると100年経つことになるんですけど、その先もキラキラした場面を伝えていきたいし、そのためにキラキラしている環境をどう残していくのかっていうのは課題やなって。だから、自分達は次の未来のために何を積み重ねていくのか。それをどう難しくやるかっていうより、どう楽しくやるかっていうことをずっとずっと考えていきたいな。

岡野:ありがとうございました!!最後に、明日、明後日いよいよ郡上アウトドアウィークの後編です!ぜひいらしてください。

GUJO OUTDOOR WEEK実行委員会

RELATED POSTS
関連する記事