日本語

BOOKS & TRAVEL
郡上への旅をより
たのしむための本
その2

文:黒田杏子(ON READING)
BOOKS&nbsp&TRAVEL郡上への旅をよりたのしむための本その2
山に肉をとりに行く 田口茂男/岩崎書店

山に肉をとりに行く

田口茂男/岩崎書店

郡上に移住した自然写真家、田口茂男による本作は、郡上市明宝の山里で、林業、農業を営みながら、秋冬に山で狩猟をする人々の暮らしをテーマにした写真絵本です。著者の師匠にあたる二人の猟師に同行し、野生のシカ、イノシシを狩り、解体し、肉を食べるまでの様子が、写真と対話形式の文章で紹介されています。私たちの生活からは遠いことのように思ってしまう狩猟ですが、作中では、あたりまえの日々の営みとして淡々と綴られているのが印象的です。 自然の恵みを受けて生活をする彼らの姿や、山や動物から学ぶことは多く、是非親子で読んでほしい一冊です。

自然豊かな郡上の里山グルメのひとつが、秋から冬に楽しめるのジビエです。ジビエが楽しめるレストランや、ジビエ肉を購入できるお店に立ち寄って、里山グルメを満喫する旅もおすすめですよ。

水の恵みを受けるまちづくり 郡上八幡の水縁空間 渡部一二/鹿島出版会

水の恵みを受けるまちづくり
郡上八幡の水縁空間

渡部一二/鹿島出版会

いつも水の音が快く迎えてくれる八幡のまち。町家の並ぶ城下町に張り巡らされた小さな水路にさらさらと水が流れる様子は、暑さの厳しい夏には特に涼しく感じられ、訪れる人の目と耳を楽しませてくれます。

郡上市八幡は、長良川の上流に位置し、吉田川、小駄良川などが合流する、水に恵まれた土地で、江戸時代に作られた御用用水をはじめ、古くから生活の中で水を使い、循環する独自のシステムが構築されています。本書は、そんな「水の町・郡上八幡」を水路や水辺の専門家である著者が37年に渡り調査したもの。水道が普及した今でも、住民の手によって管理され用途に応じて使い分けられているというのは驚くべきこと。単なるインフラを超えた、大切にしていきたい清流の文化といえるのではないでしょうか。

宮本常一著作集第36巻 越前石徹白民俗誌・その他 宮本常一/未来社

宮本常一著作集第36巻
越前石徹白民俗誌・その他

宮本常一/未来社

郡上市石徹白は、標高700メートルの高地でありながら、石器時代から人が住み、白山信仰が盛んだった平安~鎌倉期には、白山の入口として多くの修験者が訪れ栄えた土地でした。また、その中心である白山中居神社は、杉の大木やブナの原生林に囲まれ、今なお神秘的な魅力を湛えています。

日本全国を歩き記した“旅の巨人”と称される民俗学者、宮本常一が、昭和12年に初めて本格的な調査旅行をしたのがこの石徹白村(当時は福井県大野郡。昭和33年、岐阜県に一部越県合併)でした。本書は、宮本が二度にわたって訪れたこの地で聞き取りをした記録がまとめられています。白山中居神社に仕える社人の村として、江戸時代にも藩に属さず独自の自治がなされていた集落の、村の組織や行事、文化や風習、信仰や歴史は、興味深い事柄ばかりです。 現在でも、小水力発電に取り組むなどさまざまな先鋭的な取り組みをしているこの集落の原点を感じ、もっと石徹白のことを知りたくなりました。

郡上への旅をよりたのしむための本 ONREADINGプロフィール画像

黒田杏子(ON READING)

愛知県名古屋市の書店&ギャラリー ON READINGを営む。出版レーベル ELVIS PRESSも運営。店の知名度は今や全国的で、海外のブックフェアなどにも出店。20代〜30代の支持を多く集める、名古屋を代表するカルチャー的キーパーソン。郡上白鳥町には父方の祖父母の家があり、郡上は第二の故郷。白鳥おどりにも通うおどり好き。

Photographs by ON READING