郡上の現役猟師が教える、キャンプで楽しむジビエBBQ(鹿肉編)
最近よく聞くようになった「ジビエ」というワード。
しかし「ジビエ=臭い、硬い」といったイメージを持つ方も多いように感じています。
そこで今回は、現役猟師の私が美味しいジビエ(鹿肉)の食べ方を伝授したいと思います。
駆除目的で狩られることが増えた獣たち。
しかし実際は、捕獲後にそのまま廃棄される個体の割合が多いのです。
この記事をきっかけにジビエの美味しさを知っていただき、「駆除のための捕獲」から「食べるための捕獲」に変わっていくこと願っています。
そもそもジビエって何?
ジビエという言葉は最近随分と浸透してきたように思います。
そもそもの言葉はフランスが語源で、野生鳥獣の肉のことを表します。
日本での一般的なジビエというと鹿、猪、熊、鴨などがあげられます。
ジビエの特徴としては家畜(鶏豚牛など)の肉より栄養価が高いことが特徴です。
ジビエの中でも代表的なものに鹿肉と猪肉があります。
鹿肉は牛肉に近いですし、猪肉は豚肉に近い感覚です。
だけど大きく違うのはその成分。
鹿肉は脂質が少ないこともあり、低カロリーです。
その上で牛肉と比べると、高タンパク、高鉄分、高ビタミンという特徴があります。
猪肉は豚肉と同じように脂質がありますが、高鉄分で高ビタミンなのがあげられます。
ジビエって実は素晴らしい栄養価を秘めた食べ物なのです。
生食厳禁!!
古くからの猟師さんに聞くと、ジビエの生食の話を聞くことがあります。
地方によっては、美味しいからと生、もしくは生に近い状況で食べられてきていた文化もあります。
ですが基本的にはジビエの生食は厳禁です!!
野生鳥獣の生食(加熱不十分)の飲食は絶対に止めてください。
「食べた後お腹を下さなかったから大丈夫だろう」と判断するのは早々です。
お腹を下すのはそもそもジビエの処理段階の問題で、不衛生な環境でジビエが扱われたことが原因となります。
気を付けなくてはいけないのが獣が保有する寄生虫やウィルスです。(E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、旋毛虫等)
怖いことに、そういったものに感染したからと言ってすぐに症状が出るとは限らないのです。
数日後、数週間後、それこそ数十年後に発症した場合、その原因追及は厳しいものになります。
何より本人が苦しむことになります。
ですので何度も言います。
野生鳥獣の生食(加熱不十分)で食べるのは絶対に止めてください。
鹿肉の美味しい調理方法
最近日本で急増した鹿。
里や里山のみならず、奥山の森林環境下での獣害も深刻化しています。
現在各地で里や自然環境を守るために、駆除や個体数調整といった事業で捕獲が進んでいます。
しかし捕獲された個体の大多数はうまく活用されずに廃棄されているという現状。
ちゃんと調理したらとても美味しいのに…
今回はその鹿肉の調理方法を昨今急増したキャンパーの皆様に向けて紹介していきたいと思います。
アウトドア環境でも簡単に美味しく食べれるジビエ。
自然を楽しむのがキャンプ(アウトドア)なら、地の物、自然の恵を美味しく頂くことも大事な事だと思います。
ステップ1「準備用品」
今回作るのは鹿肉を使ったワイルドで肉肉しいステーキ。
BBQで使用する焼き台、そして余熱で加熱可能なスキレット(蓋付き)を用意しましょう。
もちろん美味しい鹿肉も…
ステップ2「鹿肉を手に入れよう!!」
「ジビエ(鹿肉)ってどこで買えるの??」
そう思われる方は多いかと思います。
ここ郡上市にはいくつかの獣の解体処理施設がありますが、そこで解体された肉は各地域の道の駅やサービスエリアなどに販売されています。
郡上にキャンプ等で遊びに来る時は、まずは道の駅等で旬な地域の食材と一緒にジビエを手に入れてはいかがでしょうか?
【オンラインショップ】 ◎郡上ジビエ https://gujogibier.stores.jp/ ◎道の駅めいほうオンラインショップ https://meiho.shop/item-list?categoryId=45373 【販売所】 ◎道の駅 明宝 住所:郡上市明宝大谷1015 電話番号:0575-87-2395 ◎ジビエITAYA 住所:郡上市大和町大間見1869-1 電話番号:090-6583-7255(要電話予約)
ステップ3「まずは解凍」
一般的に主な鹿肉の商品は冷凍で販売されています。
ですので、まずは鹿肉を解凍することから始めましょう。
まずは常温に置く、もしくは水、ぬるま湯にて解凍をしていきます。
ポイントはブロック肉の中までしっかり解凍するという事です。
次の工程は丁寧に低温でゆっくり加熱します。
そのため深部温度が冷たいと上手く火が通りません。
ですので常温、もしくは人肌程度の温度になるまで解凍することが大切です。
熱いお湯で解凍しないことも大事なポイントです。
この段階では加熱しないようにしましょう。
あくまで解凍です。
ステップ4「下味をつけて加熱しよう」
常温、人肌温度程度に解凍された鹿肉を取り出します。
そこでまずは下味として好みの調味料を振り掛けましょう。
今回は定番の塩胡椒を振り掛けます。
次にスキレットも上蓋もよく加熱した状態で鹿肉を焼いていきます。
まずは高温で表面だけを焼いていきます。
これからゆっくり低温で調理するのですが、鹿肉は水分が多い肉です。
表面を炙ることで水分(旨み成分)の流出を防ぎます。
この旨みをどう閉じ込めて焼き上げるかが、鹿肉を美味しく食べる大事な要素となります。
表面を焼き上げたら、蓋を閉めて火から下ろしてじっくり待ちます。
待つこと約10分弱…
早く食べたくて火の入り具合を確認してみました。
鹿肉の中心が広く赤いのが分かります。
これではまだ生の状態です。
この状態で食べてしまうと、前述した寄生虫やウィルスでの被害にあってしますかもしれません。
厚生労働省の基準では中心温度75度以上で1分以上と同程度の加熱をしましょうと位置付けられています。(中心温度63度で30分以上)
※厚生労働省 野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)
加熱不足だったため、更に蓋を閉めて余熱で火入れ。
この日は気温が低いこともありスキレットも既に冷め気味。
一旦炭で再加熱して、ジュージュー焼ける音が聞こえたら炭から降ろしてゆっくり火入れしました。
加熱時間は合計15分程度。
鹿肉の中心もロゼ色となり良い火の通り加減です。
ステップ5「盛り付け」
良い感じに火が入った鹿肉。
好みの厚さにカットして盛り付けていきます。
肉肉しさを感じたいのであれば太めのカットがおすすめです。
ステップ6「実食」
下味を付けているとはいえ、まだまだ塩気は不十分。
お好みのソースをかけましょう。
この日は市販のステーキソースを使用しました。
あとは食べるのみ!
ポイントをまとめます!
- 水に付けて常温、人肌程度の温度に解凍する!(熱いお湯は使わない)
- 直火では無く、余熱で時間をかけて加熱する!(ブロック肉のサイズや解凍された肉の温度により時間は変わります。丁寧に火入れしましょう)
- 盛り付けてお好みの味付けで!(市販品のソースでも美味しいものがいっぱい)
ステップアップ編「低温調理器を活用しよう」
皆さんは低温調理器を知っていますか?
読んで字の如くですが、低い温度でじっくり加熱する調理器具になります。
直火やフライパンでの加熱ではどうしても高温調理になり、食材の水分(旨み)を漏出することになり味を落としたり硬くなってしまうこともしばしば…
それを回避して食材の旨みを取り込んだ形で仕上げることが出来るのが特徴です。
今回の鹿肉で説明するならば、まずは解凍することから始まります。
冷凍したままや、中心温度が低いままで低温調理器を使用しても上手く火は通りません。
市販品は一般的に真空パックの冷凍で販売されてます。
パックに入ったまま水やぬるま湯で解凍し、それから低温調理していきます。
解凍が出来て(常温、人肌程度)、低温調理器で水が温まったなら低温調理の始まりです。
今回は人肌程度に温まった鹿肉のブロックを63度で1時間温めていきます。
肉のサイズや解凍温度により火の通りは変わります。
ゆっくり、そしてしっかりと熱を入れるという事を気をつけてください。
低温調理した鹿肉です。
少し赤い液体が出ているように見えますが、これは血液ではありません。
ドリップと呼ばれるもので、鹿肉の体液(水分や筋肉成分)です。
旨み成分でもあるので、如何に肉に閉じ込めて仕上げるかが美味しく食べるコツになります。
既に火が通っている鹿肉なので、お好みで表面を炙れば完成です。
事前に鹿肉を仕入れておいて、自宅でまとめて低温調理。
すぐに食べるもの以外は冷凍保存。
好きな時に解凍して簡単に食べることが出来ます。
鹿肉に低温調理器、おすすめです。
番外編「鹿フランク」
販売されているものはブロック肉だけではありません。
鹿肉をメインに使用した鹿フランクもあります。
フランクの調理法は極めて簡単です。
解凍されるまで熱を入れれば良いだけです。
ですが簡単スピーディに仕上げるのなら最初に茹で上げることおすすめします。
熱湯でフランクの深部まで熱々に。
最後に表面に焼き色がつくて程度に火入れをすれば完成。
熱々で肉汁も滴る美味しい鹿フランクの出来上がりです。
とても熱いので、肉汁での火傷に要注意です。
プリプリで熱々、そして美味いの三重奏を是非お試しください。
まとめ
現役猟師がお勧めする簡単で美味しい鹿肉の食べ方はいかがだったでしょうか??
普段扱ったことのない物だと料理法がわからず、中々手が伸びない物になってしまいがちです。
ですが簡単な調理法で本当に美味しいのです。
キャンプ等のアウトドアで、一歩踏み込んだ贅沢感を上げる料理に是非挑戦してみてください。
きっと満足度が増しますよ。
獣害と言われ駆除される個体が多い獣たち。
だけど食べ方を知っていれば害も恵みとなるのです。
「駆除するために獲る」ではなく「食べたいから獲る」へのシフト。
それが生き物本来の行動であり、健全なサイクルであると私は考えます。
それが人間界のみならず、自然界を含めて良い環境を未来へ残すという大事なアクションだと感じています。
ジビエ(鹿肉)、美味しいですよ。