【郡上八幡】 日本最大級の竪穴式立体迷路「美山鍾乳洞」地球の歴史を刻み続ける神秘の世界
郡上南部には、4つの観光地化された鍾乳洞が存在するのをご存じでしたか?人類が生まれる遥か昔、ここは暖かくサンゴが生息する海底であったことを証明します。サンゴなどが堆積してできた石灰岩が隆起し、何百、何千万年という気の遠くなるような年月をかけて、雨水や地下水がじわじわと石灰岩を溶かし、いくつもの空洞が繋がって、鍾乳洞とよばれる洞窟ができあがります。
今回は、郡上市八幡町美山(ミヤマ)にある、昭和40年に発掘された、世界的にも珍しい竪穴式立体迷路型鍾乳洞の冒険の旅へとご案内します。
地球の内部に潜入!?
幻想的な光のない世界に足を踏み入れる
山の一角にひっそりと佇む扉を
開けると冒険がスタート
チケット売り場からゲートをくぐり、山脈を眺めながら遊歩道を行くと、郡上市の天然記念物にも指定されている「美山鍾乳洞」の入り口が、山の一角にひっそりと現れます。恐る恐る扉を開けると、ぶわっと冷気が襲いかかり、異空間に誘われている感覚に陥ります。
一年中13℃から15℃に保たれた地下から湧き上がる自然の冷気です。夏は涼しく、外気が0度近くになる冬は暖かく感じるのだそう。
まだこの鍾乳洞が発見されていなかった時代を知る人は「山仕事をしていると、冷気を感じる場所があり、夏にはそこでよく涼んでいた」と話します。
自然神秘が織り成すアート
常識を覆す化石にロマン感じる
昭和40年、岐阜大学の地学科チームが発掘調査に乗り出し、この洞窟が発見されました。世界でも珍しい竪穴式で、深さ80m、東西160m、南北130mの範囲に、上下6段に渡ってホールやトンネルができています。調査中には、日本にはいないとされていた「ナウマン像」や「ヘラ鹿」などの化石も発見されています。
階段を降りたり、登ったりしていると、自分がどのくらいの地点にいるのか見当がつかなくなり「出口から深さ80m」という表記に驚きます。最低地点は気温13.1℃。湿度は逃げ場がないため、常に99.9%を保っているそうです。
自然に造形されたハートのアーチで
記念撮影を♡
石灰を含んだ水がミクロ単位で固まっていき、今でも150年で1cmほど変化し続けているという美山鍾乳洞。中には、カメの形をした岩や、ハートに見えるアーチ、妊婦のお腹のように丸く膨らんだ岩などが点在し、人間の手では到底つくりだせない神秘の造形美に圧倒されます。
思わず手を合わせたくなる「幸せを願う洞窟観音」も祀られているので、地球の軌跡に思いを馳せながら、願い事をしてみるのも良いかもしれません。
外気と光を感じたら
生き物や植物が続々登場
総延長は約2,000mともいわれ、一般公開された観光洞の通路は約800m。出口に近づいてくると、外気が交わった生ぬるい空気が漂い(夏の場合)、一気にカメラのレンズが曇るほどの湿気に覆われます。それと同時に岩に藻が生えたり、緑の葉っぱが見え始めました。
外の光が目に入ったときには、冒険から無事生還したような気分になり、達成感と多幸感を味わうこともできます。
光のない鍾乳洞から外の世界に踏み出すと
待ち受ける大パノラマの絶景
光が入ることのない湿った暗闇から抜け出すと、開放感のある光の世界にただただ感動します。89.7%を森林が占める郡上市周辺の山々を見下ろし、生命の息吹を感じながら澄んだ空気を全身で味わいましょう。
快晴の日にはいくつもの山脈の先に、御嶽山が見えることもあります。
ここでは、山や谷で音が反響する”やまびこ”が、不思議な力を持っているとされ、樹木に宿る精霊の”木霊(こだま)”に願いや想いを響かせるという貴重な体験をすることもできます。せっかくなので、心を込めて全力で叫んでみてください。
「恋人の聖地サテライト」認定
ふたりの仲深まるデートスポット♡
実はこちら、全国の観光地の中で「プロポーズに相応しいロマンティックなスポット」として、「恋人の聖地」認定がされています。
先ほども紹介しましたが、鍾乳洞内の自然に造形されたハートのアーチは、ピンクにライトアップされています。
売店で入洞チケットと同時に愛鍵〈AIKAGI〉を購入し、ハートの錠前に名前やメッセージを記入して、誓いのフェンスにロックしたら、付属の2本の鍵をそれぞれ持ち帰ることができます。数年後に愛を確かめにくる方もいるのだとか♡
薄暗く足元も不安定な鍾乳洞で手を繋ぎ、出口の展望台で告白したら、成功率も高まるかも?!誓いのフェンスには、今まで多くの恋人たちが愛を誓った軌跡がみられます。
展望台には「恋のおみくじ」や「しあわせの鐘」があり、吊り橋効果のあとのホッとした心境で、大切な人と絶景を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごすのもおすすめです。
大人もハマる食品サンプル体験で
思い出を形にして持ち帰ろう
美山鍾乳洞では、洞窟探検の後に郡上らしいクラフト体験もできます。
郡上八幡は、飲食店などの店先に並ぶ食品サンプルの発祥の地とも呼ばれ、食品サンプルのお土産が売られていたり、食品サンプル作りを体験できるスポットがいくつかあります。食品サンプルを最初につくったといわれる岩崎瀧三氏の出身地がここ郡上八幡で、岩崎模型製造株式会社は今も郡上八幡に存続しています。そんな岩崎模型直伝の食品サンプルづくりをここで体験することができるのです。
ホットプレートで作る
本物そっくりな食品サンプル
ここでは、お好み焼きとピザの2種類、ピザはホール型とピース型から好きな形を作ることができます。
絵の具のような特殊な液体と筆、予め用意された細かな材料を混ぜたり塗ったりピンセットで調整したりして作っていきます。
熱を入れると固まる液体を、ホットプレートに本物の食材を焼くように乗せていきます。熱し固めている間は、インストラクターのお兄さんが食品サンプルの歴史クイズなどで楽しませてくれました。
お好み焼きの仕上げは、ソースを塗って、マヨネーズをかけて、かつお節や青のりをふって、まるで本物の料理工程のよう。いかにリアルに作ることができるか、大人も時間を忘れて夢中になります。
完成した作品は、キーホルダーやマグネットにして持ち帰ることができます。自分だけのこだわりが詰まったオリジナルの作品をお土産にできるのは嬉しいですね。
季節を感じる絶品グルメや
小休憩にぴったりの売店もチェック
鍾乳洞の階段を上り下りし、出口がある山頂から駐車場までの少し険しい山道を歩くと、ほどよく疲れた身体が喜ぶご褒美スイーツが待ち構えています。濃厚なソフトクリームに、懐かしさ漂うメロンソーダ、シロップかけ放題のかき氷は、営業期間中いつでも食べられます。
その他にも、季節限定の鮎の塩焼きや、自分で流しながら食べる「流してねそうめん」、近隣で採れた梅を使った手作りの梅ジュースに梅酒。ローカル感満載のフードが旅の満足度を高めてくれます。
2億5千万年の時を刻んで自然につくりあげられた神秘的な世界を感じていただけましたでしょうか。営業期間は、雪が解けた3月の上旬から12月の中旬まで。ぜひ郡上の城下町観光から少し足を延ばして、幻想的な景色を味わいに行ってみてはいかがでしょうか。
一般公開されていない未開の洞窟をヘッドライトで探検する「ケイビングツアー」も人気です。全身装備で泥まみれになりながらカニ歩きやほふく前進で進む冒険は、スリル満点!途中、ヘッドライトも消して五感を頼りに進む過程は、味わったことのない特別な体験になります。