FOR NEXT 100 YEARS 長良川の使者「サツキマス」が伝えるリアルと未来
郡上市を源流域とする長良川は、鮎釣りだけでなく、渓流釣りでも人気の河川。
美しい自然の中で釣りが楽しめることから、毎年多くの釣り人が長良川を訪れ、豊かな自然で育った魚を追い求めます。
そんな長良川で、ひときわ人々を魅了し、清流長良川の使者と呼ばれる魚がいます。
その魚の名前は「サツキマス」
今回は、このサツキマスの魅力と直面する危機、そしてサツキマスから紐解く長良川の”今”と”未来”をご紹介します。
長良川の使者「サツキマス」とは?
サツキマス
- 皐月鱒、(Oncorhynchus masou ishikawae)サケ目サケ科に属する魚
- アマゴが銀化変態(スモルト化)した亜種。陸封型のアマゴに対して、サツキマスは海へ降る「降海型」
- 太平洋へ降り、さつきの花が咲く時期に遡上(そじょう)することから「サツキマス」と名付けられた。
- 国内では、長良川の他に吉野川や熊野川などで生息を確認。
- 同じサケ科で日本海へ降るヤマメの亜種は「サクラマス」と呼ばれる。
サツキマスは警戒心が高く、遡上魚であることから、出会うことはとても稀。
また、簡単に糸を切るほどのパワーを持ち、釣り上げることは至難の業で、1シーズン川に通っても釣れないことは珍しくありません。
キメが細かい銀色の肌と、盛り上がった背中。全体に丸みを帯びたぶ厚いフォルムはとても美しく、唯一無二。
その魚影に出会えた時には、鳥肌が立つと語る釣り人もいるほどです。
サツキマスを取り巻く”今”の環境
そんなサツキマスですが、年々減少の一途を辿っています。
昭和〜平成初期には長良川本流をはじめ、各支流でもその姿を見かけ、
昭和初期にはサツキマスなどを獲って生計を立てる「川漁師」が郡上にもいたほどでした。
しかし、近年になってサツキマスの遡上は減少し、網漁でも獲れず、釣りにおいては宝くじ並みの確率でしか釣れなくなったとも言われています。
減少の原因とは?
原因はいろいろありますが、最も大きいのが、彼らが棲む環境の悪化。
その影響は「遡上」と「産卵・成長」の2つの面で起きています。
「遡上」の面では、ダムや河口堰の建設による川と海の分断。
また、度重なる洪水によって川の地形が変化、環境悪化による水質・水温の変化などが考えられます。
「産卵・成長」については山が保水力を失ったことによって土砂が多く川に流れ込み、産卵環境が悪化。
人口減少・高齢化によってこれまで管理されていた森が荒れ、餌となる虫が減ったことなどによる生育環境の悪化などが影響を与えていると言われています。
澄んだ水が流れる美しい長良川ですが、その裏で起きている環境の悪化は深刻です。
そして、その現状を映し出す鏡となっているのがサツキマスなのです。
サツキマスがいつまでも棲む美しい”未来”の長良川へ
もはや、当たり前に川に魚がいる、魚を獲って楽しむだけで良い、という自然環境ではありません。
減少の一途を辿っている生物を絶滅させない。むしろ、増やすためのアクションを起こすのが、自然をフィールドにして遊ぶ者の使命ではないでしょうか。
そして、この状況を危機と感じ、既に未来に向けたアクションを起こしている人が数多くいます。
長良川サツキマス再生の会
その中の1つ、今年で4年目を迎えた「長良川サツキマス再生の会」は、毎年11月に長良川源流域に発眼卵を放流し、減少を食い止める活動を行っています。
1人の釣り人から始まった活動でしたが、徐々に輪が広がり、前年は約50人が参加した活動となりました。
郡上でアウトドアアクティビティを提供する、私たちGUJO Outdoor Experiencsは、まず「外で遊ぶ」ことの楽しさを提唱し、
”あそび” を通して長良川をはじめとした自然の素晴らしさ、そして直面している危機を知り、サツキマスが棲む美しい長良川を残す為に、皆さんと一緒にアクションを起こして行きたいと思っています。
最後に・・・
こちら本は、1991年に発刊された「サツキマスのいた川」というタイトルで
長良川とサツキマスを題材にして田口茂男さんによって描かれました。
あらすじは、
不思議な切符をきっかけに、長良川とサツキマスの魅力に触れる旅をした少年でしたが、その訪れた場所は30年前の長良川。現代に戻った今では長良川は激変し、サツキマスは絶滅したと知らされるお話。
この本で描かれる”現代”は2011年と設定されていますが、2022年を迎えた今でも、かろうじて美しい長良川とサツキマスは残っています。
これから100年先の”未来”に自分達の子供や孫が、私たちと同じようにサツキマスとの釣りを楽しむ為に
”今” がそのアクションを起こすタイミングだと私たちは思っています。
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